Monday, October 19, 2009

北欧のパンが変わる

*今日はパンの話題がノルウェーとデンマークの新聞で採り上げられていた。北欧のパンが変わりつつあることがよくわかる。

 ノルウェーではオスロで最高のパンのコンテストがあり、優勝はサンフランシスコ・サワードウ・ブレッドを焼いているベーカリー。見た目は古きよきノルウェーのパンとはまるで異なって、おしゃれな感じではあるが、何か寂しい。普通に家で焼いて食べていたような、全粒粉のしっとりした感じのパンの人気は下がり気味なのだろうか。最近ではホテルでも、このタイプのものでおいしいものにはお目にかかれなくなってきた。

 デンマークではいわゆる「白パン」の需要が激減しているため、10年後にはなくなるのではないかというベーカリー協会の見通し。白パンはすでに焼いているベーカリーが少なく、注文は高齢者施設からが主体という状態だそうだ。

 デンマークのこの傾向は完全な健康志向から来るものだが、もともとデンマークはライ麦や雑穀入りのみっしりしたパンが中心で、白パンはお祝い事によく使われてきた。パンに載せて食べるものを考えるとわかるのだが、ニシンの酢漬けやしっかりしたハム、ローストビーフなどはパン自体がしっかりしていないとバランスが悪い。白パンはエビ(それほどではないが、贅沢な食材ではある)などあっさりめに塩ゆでしただけの海産物を載せて食べたりしていた。

 普段の雑穀パンの代わりに小麦だけの真っ白なパンを食べるというのは慎ましい時代の贅沢だったわけだが、この「白」の度合いがそれほどでなくても別にいいではないか、という感じの昨今。ほうれん草入りだのハーブ入りだの、さまざまな工夫を凝らしたものが店ごとにあって、これはこれで楽しいのだが、やはりちょっと寂しい。

 全体で言えば、10年前に比べたら、北欧の食生活はバラエティが増えて、そして贅沢になってきたとは言える。コーヒーもカフェラテ人気だし、菓子パンも大きくなったし、各国のさまざまなレシピが広まって、フランスパンやイタリア風のパンの焼き方をすてきな写真と共に解説する本も多種出ている。サンドイッチと言えば、薄切りのパンにチーズなどを載せたものくらいだったのが、バゲットサンドの方が今は多いくらいだ。その具にしても、いろいろと工夫を凝らしていて楽しい。

 が、やはりいるところにはいるもので、こうしたバゲットサンドの店に入って「いちばんノルウェーっぽいの」などと注文するおばさんたちもいる。たぶん私と同じ年頃なんだろうな。