Saturday, October 17, 2009

4自治体でヘロインを無償に ~デンマーク

*数ヶ月先のことになるが、デンマークのコペンハーゲン、オーデンセ、グロストロップ、エスビヤォ4自治体のヘロイン・クリニックで、中毒患者に無償でヘロインが与えられる制度が試行される。

中毒・依存症の立ち直りに不可欠とされる社会との接触がまるで欠けてしまっている患者たちに対し、少なくとも一般社会で暮らせるような状態を医師の処方箋でヘロイン補助しながら訓練し、最終的にはなんらかの仕事に就いて独立して生きていける状態にすることが目的だ。副次効果として、ヘロイン購入のために犯す窃盗や強盗などの犯罪も減少すると見られている。

この制度の倫理的側面については反対意見も多く、麻薬依存撲滅協会では「患者には麻薬なしで生きていけるようにすることが第一のはず。この制度は一般市民の安全を重視して、患者本人の人間性を軽視している」とコメントしている。

北欧には麻薬依存そのものも問題だが、ブラックマーケットがあることの方が大きな問題だと考える専門家が少なくない。利用者は登録するなり何なりして、薬物を政府が専売で管理、治療プログラムも並行して行うという方法が推奨されたりしている。中毒者の人権に関しても、賛成派はヘロイン中毒者でも価値ある人生を送っているという実感が立ち直りに必要なはずだし、そのために管理された形でヘロインを与えながら安定した生活が送れるのはよいことではないかと考え、反対派は上記のように、ヘロインを少量ながらも投与し続けたら依存状態からは一生抜けられないのではないか、依存している限り、人生に自由はないのではないかと考える。

それにしてもデンマークは相変わらず実験的だ。世界に先駆けてポルノ解禁し、ゲイのパートナー登録(実質的には結婚)を認め、とやってきた国だけのことはある。ポルノ解禁のときには「デンマーク国民は解禁したからといって流されないくらいには文化的に成熟している」と担当大臣が言ったそうだが、今回はなかなか難しい。北欧の中では唯一ヨーロッパ大陸にあるデンマークは、これまでも麻薬取引をめぐって犯罪グループが激しく暴力的に対立しあうこともあったから対応を迫られているには違いないが、果たしてどんな結果になるのか。