*北欧では託児所に子供を預けず、自分で面倒を見ている場合には現金での給付がある。これは女性が働く意欲を削ぐものとして長いこと批判の対象になっているが、託児所さえ確保できれば働き始める女性が多く、この給付された現金も、託児所ではなくベビーシッターへの支払いに回して、パートタイム就労をする母親たちがほとんどだ。
が、やはり固定的に給付を受ける数は、減少するどころか増加する傾向にある。デンマークもそうで、今日のユラン・ポステン紙では「受給者の80%が移民」という記事が掲載されている。
http://jyllands-posten.dk/indland/ECE7124090/80-pct.-af-alle-%E6gtepar-p%E5-kontanthj%E6lp-er-indvandrere/
受給者が増加して就労人口が減少、ひいては税収も減少、という傾向を恐れ、とにかく教育を受けさせることが解決方法、と提示されてはいるが、本当にそうかなという気もしないではない。
というのは移民、あるいは移民家族としてやってきたという背景のある人たちの場合、食事からして北欧の一般とは相当違う。一品作ればそれでよし、という国から来た人たちばかりではないし、宗教的な制限もあって、菜食だ、ハラルだ、と買い物ひとつ、作り方ひとつでも手間のかかるケースも多い。ある移民家庭では、米粉のパンケーキみたいなものを焼くのに豆を発酵させたりしていたが、発酵具合を見ながらの作業だったりするので、こんなことをしていたら、まあ外に働きに行くのは難しいだろうなあと思う。
教育を受けたら、それが何か変わる方向に行くのだろうか。こんな面倒な料理をするために生まれてきたわけではない!と思うに至ったとしても、結局誰かが作らないとやっていけない家庭がほとんどじゃないかと思うが。
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Monday, October 20, 2014
Sunday, September 22, 2013
認知症のためのケアハウス増加を
*デンマークで高齢者用のケアハウスに入居する人たちの、3人に2人が認知症。しかし全国4万6000カ所のケアハウスのうち、認知症に対応しているところは6000カ所に過ぎない。しかも現在8万5000人という認知症高齢者の数は、2040年には倍になると予測されている。
http://jyllands-posten.dk/indland/ECE5990395/mangel-pa-plejehjem-til-boelge-af-demente/
新聞社の調査によると、ケアハウスの所長の40%が、自分の管轄する施設は物理的に認知症患者に適していないと認めている。
高齢者連盟によると、認知症患者に適した物理的な条件とは、
・玄関にセキュリティ対策が敷かれていること
・機能別にスペース・階が色分けされていること
・庭に歩きやすい道があり、そこに手すりが設けられていること
などだそうだ。これなら特に認知症の高齢者のみならず、認知症のない人にも便利な設備。予算的には難しいところもあるだろうが、全施設を認知症向けに整備してもらいたいという高齢者連盟の希望を、かなえることにそう無理があるとも思えない。
政府がさっそく乗り出して、各自治体に施設の改装などを指導していくことになっているが、いちばんたいへんな課題は、認知症のケアにあたるスタッフの養成。こちらもまだ30年近くあるから大丈夫、と楽観していられない状況だ。
http://jyllands-posten.dk/indland/ECE5990395/mangel-pa-plejehjem-til-boelge-af-demente/
新聞社の調査によると、ケアハウスの所長の40%が、自分の管轄する施設は物理的に認知症患者に適していないと認めている。
高齢者連盟によると、認知症患者に適した物理的な条件とは、
・玄関にセキュリティ対策が敷かれていること
・機能別にスペース・階が色分けされていること
・庭に歩きやすい道があり、そこに手すりが設けられていること
などだそうだ。これなら特に認知症の高齢者のみならず、認知症のない人にも便利な設備。予算的には難しいところもあるだろうが、全施設を認知症向けに整備してもらいたいという高齢者連盟の希望を、かなえることにそう無理があるとも思えない。
政府がさっそく乗り出して、各自治体に施設の改装などを指導していくことになっているが、いちばんたいへんな課題は、認知症のケアにあたるスタッフの養成。こちらもまだ30年近くあるから大丈夫、と楽観していられない状況だ。
Saturday, June 8, 2013
デンマークの「貧困限界線」
*昨年5月から招集された特別委員会で、デンマークでは新たな貧困限界線を設定。
独身の場合、年収10万3200クローネ(約200万円)以下、そして4人家族の場合は23万7000クローネ(約460万円)以下となったが、3年に渡って国民平均所得の2分の1だった場合も貧困状態とみなされることになった。
これに該当するデンマーク人は4万2200人。ここからさらに児童だけを見ると、1万700人が貧困家庭で育てられていることになる。
http://jyllands-posten.dk/indland/ECE5583262/eksperters-bud-42200-er-fattige/
委員の1人、Jann Sjursenは「社会的疎外者委員会(Råde for Udsatte)によると、この11年間でこの貧困層が3倍に増えている。これは政治的に対策を取らねばならない大きな社会問題」とコメント。
各政党の反応はまちまちだが、基本的には「本当の貧困という意味ではない」と考えているようだ。相対的に貧困層にはなるが、住む場所も服もなく、食べるものもないというような、伝統的な「貧困」に苦しむ家庭はデンマークにはない、というのがほとんどに共通した意見。
社会大臣は経済的に救済することだけで解決になるとは考えておらず、なぜ、どういうタイプの人が貧困層にとどまってしまうのかを調査し、それを阻むための政策とは何かを検討していくとしている。
http://jyllands-posten.dk/indland/ECE5585351/joachim-b-olsen-fattigdomsgraense-er-til-grin/
独身の場合、年収10万3200クローネ(約200万円)以下、そして4人家族の場合は23万7000クローネ(約460万円)以下となったが、3年に渡って国民平均所得の2分の1だった場合も貧困状態とみなされることになった。
これに該当するデンマーク人は4万2200人。ここからさらに児童だけを見ると、1万700人が貧困家庭で育てられていることになる。
http://jyllands-posten.dk/indland/ECE5583262/eksperters-bud-42200-er-fattige/
委員の1人、Jann Sjursenは「社会的疎外者委員会(Råde for Udsatte)によると、この11年間でこの貧困層が3倍に増えている。これは政治的に対策を取らねばならない大きな社会問題」とコメント。
各政党の反応はまちまちだが、基本的には「本当の貧困という意味ではない」と考えているようだ。相対的に貧困層にはなるが、住む場所も服もなく、食べるものもないというような、伝統的な「貧困」に苦しむ家庭はデンマークにはない、というのがほとんどに共通した意見。
社会大臣は経済的に救済することだけで解決になるとは考えておらず、なぜ、どういうタイプの人が貧困層にとどまってしまうのかを調査し、それを阻むための政策とは何かを検討していくとしている。
http://jyllands-posten.dk/indland/ECE5585351/joachim-b-olsen-fattigdomsgraense-er-til-grin/
Thursday, May 6, 2010
児童に対する家庭内暴力の防止策
育児休暇中のストールバルゲ法務大臣は児童に対する家庭内暴力対策として、改正案を検討している。リスクの高い家族に週に1度警察を派遣する、暴力に対する刑罰を強化するなど。モデルはスペインで行っている対策。
ノルウェーでは過去10年で32人の児童が両親の暴力で命を落としている。
Saturday, April 10, 2010
高齢化への対応策 〜デンマーク
ユラン・ポステン紙の調査で、迫る高齢人口増加に際し、デンマーク人は税の引き上げを解決策として望むという結果が出た。財源不足が予想される中で、40%が税の引き上げを希望。制度改革、サービス削減を望む人は17%にとどまった。
財務大臣や経済界の関係者はこれはこれで問題ある態度だと分析している。公共財源のために可処分所得が減じると購買力が減じて消費が滞り、そのために一般企業の雇用が拡大しないという懸念がひとつ。また制度保護のためにどこまでも税金を支払ってもよいというのも、時代に即した制度を国民全体で考えていく妨げになるというのがもうひとつ。
デンマーク人は政府を銀行と考えていると言われるけれど、毎月貯蓄するより税金や保険で将来を安定させる方がよいらしい。専門家からは「まったく問題なし」とお墨付きのデンマーク社会福祉制度は、それにしても国民から多大な支持を受けているというのがよくわかる調査だ。
Tuesday, April 6, 2010
現金給付の見直しを ~デンマーク
デンマーク社会民主党が現金給付システムの改革を提唱。単純に現金を補助として給付するのではなく、代わりになんらかの簡単な仕事と引き換えにする制度の導入を訴えている。http://jp.dk/indland/indland_politik/article2029840.ece
現金給付は現在の制度では:
失業などによる生活状況の変化により、自身と家族を扶養できない場合に
・デンマーク及びEU諸国で8年以上の居住し
・ デンマーク国内でこの8年間に2年半以上雇用されていて
・職業案内所に登録されている という条件の下に 6ヶ月間は最大で
25歳未満の場合:
・両親と同居している場合には月3065Kr
・別居の場合には6351kr
・妊娠12週目以降は9857kr
・扶養家族がいる場合には13096kr
25歳以上の場合
・9857kr
・扶養家族がいる場合には13096kr
6ヶ月を超過すると:
・25歳未満で両親と別居の場合には毎月967kr減額。同居の場合には388kr減額。
・夫婦共に25歳以上で双方が給付を受けている場合にはそれぞれ622kr減額
・継続して受給する場合でも、24ヶ月内に450時間労働が義務付けられる。
この現金給付は「失業保険」とは別。失業保険に入っていない状態で失業した場合、離婚、別居、出産、教育などの理由で生活が成り立たなくなる場合に申請できる。
Saturday, October 17, 2009
4自治体でヘロインを無償に ~デンマーク
*数ヶ月先のことになるが、デンマークのコペンハーゲン、オーデンセ、グロストロップ、エスビヤォ4自治体のヘロイン・クリニックで、中毒患者に無償でヘロインが与えられる制度が試行される。
中毒・依存症の立ち直りに不可欠とされる社会との接触がまるで欠けてしまっている患者たちに対し、少なくとも一般社会で暮らせるような状態を医師の処方箋でヘロイン補助しながら訓練し、最終的にはなんらかの仕事に就いて独立して生きていける状態にすることが目的だ。副次効果として、ヘロイン購入のために犯す窃盗や強盗などの犯罪も減少すると見られている。
この制度の倫理的側面については反対意見も多く、麻薬依存撲滅協会では「患者には麻薬なしで生きていけるようにすることが第一のはず。この制度は一般市民の安全を重視して、患者本人の人間性を軽視している」とコメントしている。
北欧には麻薬依存そのものも問題だが、ブラックマーケットがあることの方が大きな問題だと考える専門家が少なくない。利用者は登録するなり何なりして、薬物を政府が専売で管理、治療プログラムも並行して行うという方法が推奨されたりしている。中毒者の人権に関しても、賛成派はヘロイン中毒者でも価値ある人生を送っているという実感が立ち直りに必要なはずだし、そのために管理された形でヘロインを与えながら安定した生活が送れるのはよいことではないかと考え、反対派は上記のように、ヘロインを少量ながらも投与し続けたら依存状態からは一生抜けられないのではないか、依存している限り、人生に自由はないのではないかと考える。
それにしてもデンマークは相変わらず実験的だ。世界に先駆けてポルノ解禁し、ゲイのパートナー登録(実質的には結婚)を認め、とやってきた国だけのことはある。ポルノ解禁のときには「デンマーク国民は解禁したからといって流されないくらいには文化的に成熟している」と担当大臣が言ったそうだが、今回はなかなか難しい。北欧の中では唯一ヨーロッパ大陸にあるデンマークは、これまでも麻薬取引をめぐって犯罪グループが激しく暴力的に対立しあうこともあったから対応を迫られているには違いないが、果たしてどんな結果になるのか。
中毒・依存症の立ち直りに不可欠とされる社会との接触がまるで欠けてしまっている患者たちに対し、少なくとも一般社会で暮らせるような状態を医師の処方箋でヘロイン補助しながら訓練し、最終的にはなんらかの仕事に就いて独立して生きていける状態にすることが目的だ。副次効果として、ヘロイン購入のために犯す窃盗や強盗などの犯罪も減少すると見られている。
この制度の倫理的側面については反対意見も多く、麻薬依存撲滅協会では「患者には麻薬なしで生きていけるようにすることが第一のはず。この制度は一般市民の安全を重視して、患者本人の人間性を軽視している」とコメントしている。
北欧には麻薬依存そのものも問題だが、ブラックマーケットがあることの方が大きな問題だと考える専門家が少なくない。利用者は登録するなり何なりして、薬物を政府が専売で管理、治療プログラムも並行して行うという方法が推奨されたりしている。中毒者の人権に関しても、賛成派はヘロイン中毒者でも価値ある人生を送っているという実感が立ち直りに必要なはずだし、そのために管理された形でヘロインを与えながら安定した生活が送れるのはよいことではないかと考え、反対派は上記のように、ヘロインを少量ながらも投与し続けたら依存状態からは一生抜けられないのではないか、依存している限り、人生に自由はないのではないかと考える。
それにしてもデンマークは相変わらず実験的だ。世界に先駆けてポルノ解禁し、ゲイのパートナー登録(実質的には結婚)を認め、とやってきた国だけのことはある。ポルノ解禁のときには「デンマーク国民は解禁したからといって流されないくらいには文化的に成熟している」と担当大臣が言ったそうだが、今回はなかなか難しい。北欧の中では唯一ヨーロッパ大陸にあるデンマークは、これまでも麻薬取引をめぐって犯罪グループが激しく暴力的に対立しあうこともあったから対応を迫られているには違いないが、果たしてどんな結果になるのか。
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